日時:2022年12月15日 16:30-17:30
場所:W1-B211
講師: 飯沼昌隆氏 (広島大学大学院先進理工系科学研究科助教)
題目:ベルの不等式の破れがもたらしたもの
※Zoom配信を行います。
量子フェローシップ Moodleのノーベル賞講演会のトピックにZoomURLがあ ります。
概要:
2022年のノーベル物理学賞の受賞者に、クラウザー教授、 アスペ教授、ツァイリンガー教授の3名が選ばれました。 3名が成し遂げた偉業は、「ベルの不等式」 の破れの実験的な検証、さらにその結果を応用したところにあり、 世界的な盛り上がりを見せている量子情報科学という分野の基礎に もなっています。「ベルの不等式」の破れの実験的検証が、 量子力学が確立して以来長きにわたり繰り広げられてきた議論にほ ぼ終止符を打ちました。 1920年代に始まった量子力学の概念に関する論争は、 1935年のEPRパラドックス、 検証可能性を初めて示した1964年のベルの不等式、 1969年のクラウザーらによるベルの不等式の改良版のCHSH 不等式、1972年の最初のクラウザーの実験と指摘された問題、 問題の一つを解決した1981年のアスペの実験、 さらに残った問題をほぼ解決し、量子情報科学への橋渡しとなる「 量子テレポーテーション」を示したツァイリンガーの実験と、 このように引き継がれ、現在に至ります。 量子力学に関する論争について、 歴史的なステップを踏まえながら、 ベルの不等式の破れの意味を中心にお話しします。 そしてその結果が基礎物理学の概念をどのように変えたのか、 またどのように「量子テレポーテーション」に応用されたのか、 にまで踏み込むつもりです。